開業から一年が経過した。
その中で感じた、暮らしの多様さは、医師としての在り方に大きな影響を与えた。
病気を治すこと、症状をとること、基準値におさめること。
これらは医師が患者に求められる役割である。
病院勤務の時には、この役割を全うするために全ての時間を費やし、そしてこの役割を果たすごとに充実感を得ていた。
しかし、その先にある暮らしに目を向けた時に、本当に人は豊かになっているのだろうかという問いが浮かぶようになった。
在宅医として、人の暮らしにお邪魔する中で、必ずしも医療が暮らしを豊かにできていない現実があった。
自ら一人を望んだわけではない独り暮らしの方が、肺炎で入院し、治療の末退院する。そこに待っているのは、独りの生活だ。この解決方法が施設入所か、家族が引き取るかのいずれかである。
どちらにせよ、本人にとっては見知らぬ環境で一から暮らしをやり直す必要がある。
もちろん、それで豊かさを手に入れる人もいるだろう。
でも、自分ならどうか?やっぱり住み慣れた場所で、知っている顔や物に囲まれて暮らしていきたいと思うだろう。
そこには紡いできた想いがあり、積み重ねてきた歴史がある。
その中で生きることが、その人らしい暮らしと言えるのではないか。
そんな暮らし方を続けることができるような仕組みを創造することが、在宅医としての自分に課した役割である。